示された奥義

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示された奥義

1:7わたしたちは、御子にあって、神の豊かな恵みのゆえに、その血によるあがない、すなわち、罪過のゆるしを受けたのである。
1:8神はその恵みをさらに増し加えて、あらゆる知恵と悟りとをわたしたちに賜わり、
1:9[御旨の奥義を、自らあらかじめ定められた計画に従って、わたしたちに示して下さったのである。
1:10それは、時の満ちるに及んで実現されるご計画にほかならない。それによって、神は天にあるもの地にあるものを、ことごとく、キリストにあって一つに帰せしめようとされたのである。
1:11わたしたちは、御旨の欲するままにすべての事をなさるかたの目的の下に、キリストにあってあらかじめ定められ、神の民として選ばれたのである。
1:12それは、早くからキリストに望みをおいているわたしたちが、神の栄光をほめたたえる者となるためである。エペソ人への手紙 1章 7節から12節

 <神はその恵みをさらに増し加えて、あらゆる知恵と悟りとをわたしたちに賜わり、御旨の奥義を、自らあらかじめ定められた計画に従って、わたしたちに示して下さったのである。>


 


エペソ人への手紙、18節、9節のみ言葉であります。この手紙の、主なテーマである「キリストにある教会の一致」というテーマのもと、先週は、3節からのみ言葉に聞いてまいりました。教会とはイエス・キリストへの信仰によって、時代を超えて神の民とせられた者、全ての、一つの集合体であり、その構成要員たる私たち一人一人の、選びということについて教えられました。


それは、まず、父なる神が、天地の作られる前から定めていて下さったご計画による選びであり、その基準は私たちの内にはなくて、神様にご主権があり、測り知ることのできない神様のご深慮、一方的な、恵みと憐れみによる、と言うことでありました。そして、それはキリストにあって、ということが繰り返し強調されていました。


この父なる神による、選びのご計画は、天地の造られる前から、とありましたように、私たちの想像を超えた、大昔からのご計画でありました。永遠という人間の認識の外側にある、ご計画。それはすなわち神様が定められておったということですけれども、天地の造られる前、というように、時間の中に生きる、有限な私たちが、何とか理解できるように、神様のご本質を垣間見て、畏れることができるように表されております。


そして、事実、歴史においてもそれは示されていました。パウロがこの手紙を記すより、ずっと以前、大昔から、既に過去において、旧約聖書に啓示されていた、または秘められていた、主なる神のお約束、預言であります。それが、6節までに記されていた、父なる神が定めておられた選びのご計画であります。


 この、遥かな過去から約束されてきたご計画が、現在、すなわちパウロが語っている時代。イエス・キリストが、天より、この地に来てくださったその時代。新約聖書の記者と、読者にとってはまさに現在。そのご計画が実現したという歴史的な事実。さらにその意味。神のみ旨の奥義を、明らか示して下さった、ということを、本日のみ言葉が教えています。


 


 まず、7節で実現したことの第一が示されます。


<わたしたちは、御子にあって、神の豊かな恵みのゆえに、その血によるあがない、すなわち、罪過のゆるしを受けたのである。>


神の御子、キリストの血による贖いであります。この贖いということには三つの意味があると言われております。ひとつは、身代金。代価であります。キリストの血を代価として、買い取られるという意味です。


「贖い」という言葉自体は、もともと代価を払って奴隷を買い取るという意味の言葉です。


第一コリントの620節(新約262頁)では


<あなたがたは、代価を払って買い取られたのだ。それだから自分のからだをもって、神の栄光を表しなさい>


と言われています。罪の奴隷から、買い取ってくださったのです。


もう一つは、律法の呪いを取り除くこと、すなわち罪により全き服従を成しえない者への、神の裁きの免除です。これはガラテヤ4章の5節をお読みいたしましょう(新約297頁)


<それは、律法の下にある者をあがない出すため、私たちに子たる身分を授けるためであった>


と説明されています。


最後は、罪の束縛から解放して自由にすること。これは第一ペテロ118節にあります。(新約367頁)18節なかばから19節後半


<あなたがたが先祖伝来の空疎な生活からあがない出されたのは・・キリストの尊い血によったのである>


以上のように、キリストが十字架で流された血によって、私たちの罪が許され、永遠の滅びに至る神の裁きを免れ、買い取られて神のものとされて、罪と束縛、サタンの支配からの自由が与えられたのであります。


これ程の、大きな恵みに満ちたキリストの血というものが、いったいどういうものであったか。一カ所、聖書を引きます。新約聖書217頁。使徒行伝2028節の途中からお読みいたします。


<神が御子の血であがない取られた神の教会・・>


とあります。この「御子の血」というところ。原文には「御子」という言葉はありません。ですから、直訳すると「神がご自身の血であがない取られた」となります。歴史的には、御子イエス様の血が流されたため、御子という言葉を入れていますが、その御子の血は、これは神ご自身の血である、ということであります。


 み心への完全な服従を実行し、神様の全き義を満たし、人の罪を贖いうるのは、罪の内にある人には、決してかなわず、神様ご自身にしか成し得ないことでありました。ここに、イエス・キリストが、真の神であられたことが証しされるわけであります。同時に、それは人が果たすべき義務であり、人でなければ、人がみ心にかなったことになりません。すなわち、まことの神であり、また人であられたイエス・キリスト。キリストの十字架によって贖われたということは、キリストの二性一人格ということの真実。必然性が示されるのであります。


 このようにして、神の御子キリストによって、私たちは贖われ救い出されました。それは教会というものが、キリストに買い取られた神の教会である、ということを意味しています。三位一体のうちの、父と子。二つのご神格がいかに強く繋がっており、深く交わっておられ、一体であられたか。私たちの為に、共に働いてくださったか。それがはっきりと示されています。


 


 こうしてキリストによる救いに与った者、ここでは聖霊を通して与えられるところの信仰については、省略されています。しかし、救われたものには、さらに恵みが増し加えられる、とされています。89節をお読みいたします。


<神はその恵みをさらに増し加えて、あらゆる知恵と悟りとをわたしたちに賜わり、御旨の奥義を、自らあらかじめ定められた計画に従って、わたしたちに示して下さったのである。>


 救ってくださっただけではなく、あらゆる「知恵」と「悟り」を与えて下さいます。知恵とは、現実の、ものの本質に対関する知識、洞察力であります。また、悟りとは、その適用。正しい行為に導く聡明さであると、注釈されています。以前少しお話ししました、ヴァン・ティル風に言うと、メタフィジカルとエシカル。形而上学的理解と、倫理的良心という風に言えるかもしれません。


神の永遠の聖なるご計画。測りがたい深い愛の御業を、実行してくださるだけでなく、その奥義を私たちが、認識し、理解し、喜ぶことができるように、そのような賜物まで、ご用意くださっているという、恵みの豊かさを覚えて感謝したいと思います。本当に手取り足取り、ということです。


 この「恵みが豊かだ」ということは、この手紙の中で5回も繰り返されています。この7節以外では、2章4節と、7節。3章の8節と16節です。またご参照いただければと思います。少し表現は違いますが、同じ言葉です。パウロはそれほどに、神の恵みの豊かさを感じておったということであります。


 


 それでは、示して下さった奥義とは何であったかといいますと、10節です。


<それは、時の満ちるに及んで実現されるご計画にほかならない。それによって、神は天にあるもの地にあるものを、ことごとく、キリストにあって一つに帰せしめようとされたのである。>


満ちた時とは、イエス・キリストがおいでになった時です。ガラテヤ4章の4節でそのように明言されています。ですから、時が満ちて実現されるご計画とは、パウロらにとってはまさに今、その時。キリストによって実現された、救いの御業であります。


しかもそれは、個人的な、また人間だけの救いにとどまらず、「天にあるもの地にあるものを、ことごとくキリストにあって一つに帰せしめる」という、まさにこの世全体の、宇宙的規模の御業であります。万物も、人も、み使いも、全てキリストをかしらとして、キリストに従うものとなった。全宇宙の、御国のすべての権威がキリストに委ねられていることが明らかにされたのであります。


これは、ユダヤ人が、聖書に聞いて待ち望んでいた、政治的なユダヤ国家の救い主ではありませんでした。世界の、人類の救い主でもまだ足りない、本当に宇宙の救い主とでも、表しようがないような、偉大なお方でありました。その大きすぎる偉大さ、栄光ゆえに、ユダヤ人にとっては躓きでもあったのかも知れません。自分たちだけの救い主だと思っていたら、それは全て国民の、宇宙の救い主であったということです。


コロサイ人への手紙を引いてみます。新約聖書314頁。コロサイ1章の16節です。


<万物は、天にあるものも地にあるものも、位も主権も、支配も権威も、みな御子にあって造られたからである。これらいっさいのものは、御子によって造られ、御子のために造られたのである>


 それから20


<そして、その十字架の血によって平和をつくり、万物、すなわち、地にあるもの、天にあるものを、ことごとく、彼によってご自分と和解させてくださったのである>


神が、私たちにあたえて下さった信仰と、さらに知恵と悟りによって示して下さった、奥義。実現したご計画とは、以上のように、今私たちを取り囲んでいる、全世界。宇宙に及ぶ、御子イエス・キリストの贖いと、ご支配の御業でありました。そして聖書のみ言葉を通して、これを教えられた私たちを11節はこのように語っています。 


<わたしたちは、御旨の欲するままにすべての事をなさるかたの目的の下に、キリストにあってあらかじめ定められ、神の民として選ばれたのである。>


み旨の欲するままにすべての事を、という、全能の父なる神が。キリストにあって、あらかじめ定め、選ばれたものであるということです。ここで、神の民と言われていますが、言葉としては「神に所有された」あるいは「相続人」。子とされる、という通り、御国を継ぐものとされた、ということになります。その意味で、私たちは、もはや地上の民ではなく、御国の民、キリストの民なのだということであります。


そしてそれは、全能の神の目的のもとに、というその目的が、12節。


<それは、早くからキリストに望みをおいているわたしたちが、神の栄光をほめたたえる者となるためである。>


 


 先週、6節にもありました通り、「神の栄光を褒めたたえる」ということ。父なる神の、永遠の選びのご計画。その目的は、私たちが「御子によって賜った栄光ある恵みを褒めたたえる」ためでありました。さらに、今朝、御子キリストによる贖いの御業の目的もまた、キリストにあって一つとされた民、私たち教会が「神の栄光を褒めたたえるため」だと聖書は教えています。


 なんとなれば、人間は今は罪のもとにあって、神に背を向けるものではありますが、本来そのようなものとして、神様の似姿としてつくられ、主の栄光を表すことに、永遠に変わらない、喜びを得る存在だからであります。


 ここに、遠い過去から父によって計画され、今現在、御子によって実現した、救いの御業が「私たちがほめたたえるために」という目的のもとに備えられていたという、何重にも積み重ねられた神の恵みを、知ることができるのであります。この、パウロがイエス様により、聖霊より賜った、知恵と悟りによるみ言葉を覚え、主なる神を讃えたいと思います。  (以上)

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