月報 2023年4月 「旧約聖書について」
【それから彼らに対して言われた、「わたしが以前あなたがたと一緒にいた時分に話して聞かせた言葉は、こうであった。すなわち、モーセの律法と預言書と詩篇とに、わたしについて書いてあることは、必ずことごとく成就する】ルカによる福音書 24章44節
標記の聖句は、イエス様が復活された後、弟子たちに教えられた御言葉です。イエス様はご自身のことが書かれた聖書について、「モーセの律法・預言書・詩篇」とおっしゃっています。これは、旧約聖書の一部を指しているのではなく、実は<旧約聖書全体>のことを表わしています。今回は、旧約聖書の構成について見て参りましょう。もともと、ヘブル語で書き記された旧約聖書は、大きく三つに分けられていました。この三つを「トーラー」、「ネビーイーム」、「ケスービーム」と言います。それぞれを日本語に訳すと「律法」、「預言書」、「諸書」となります。そして「詩篇」は「諸書(ケスービーム)」に含まれます。
つまり、イエス様は、当時の旧約聖書全体を表わす表現として「モーセの律法・預言書・詩篇」と表現されたわけです。現在でもユダヤ教では、聖書の事を、この三つの分類の頭文字を取って、「タナハ」(またはタナク)と呼んでいます。(ヘブル語表記:ת נ כ・ヘブル語は右から読むので、右から順にT・N・Khになります。)それでは、旧約聖書(タナハ:ת נ כ)の内訳を詳しく書いていきますので、参照してください。(カッコ内はヘブル語表記です。)
(1) トーラー(תוֹרָה)は、律法を意味し、いわゆるモーセ五書のことです。次の5巻です。
・創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記
(2) ネビーイーム(נְבִיאִים)は「預言書」と呼ばれ、21巻あります。
ヘブル語の「預言者(ナビ)」の複数形で「預言者達」という意味です。そこで、最近の翻訳では「預言者たちの書」と表現されています。預言書は「前の預言書」(6巻)と「後の預言書」(15巻)に大別されます。
(前後の境目は、時代で、イスラエル分裂の前後になります。)
<前期預言書( “歴史書”とも言います)>
・ヨシュア記 ・士師記 ・サムエル記上 ・同下 ・列王記上 ・同下
<後期預言書>さらに三大預言書と、十二小預言書に分かれます。
(三大預言書) ・イザヤ書 ・エレミヤ書 ・エゼキエル書
(十二小預言書)・ホセア書 ・ヨエル書 ・アモス書 ・オバデヤ書 ・ヨナ書 ・ミカ書・ナホム書 ・ハバクク書 ・ゼパニヤ書 ・ハガイ書 ゼカリヤ書 ・マラキ書
(3) ケスービーム(כְּתוּבִים)は「諸書」(文学書とも呼ばれます)で、全部で13巻からなります。その中で更に「詩歌」「五つの巻物」「その他」に分類されます。内訳は以下の通りです。
「詩 歌」 ・詩篇 ・箴言 ・ヨブ記
「五つの巻物」 ①雅歌 ②ルツ記 ③哀歌 ④伝道の書 ⑤エステル記
「その他」 ・歴代誌上 ・同下 ・エズラ記 ・ネヘミヤ記 ・ダニエル書
※今回は、旧約聖書全39巻の、分類だけとなりました。次回は、三区分のポイントや特徴について。また、現在の聖書とは並びが違っている点などを見て参りたいと思います。