月報 2023年5月 「旧約聖書について(2)」
【また幼い時から、聖書に親しみ、それが、キリスト・イエスに対する信仰によって救に至る知恵を、あなたに与えうる書物であることを知っている。】テモテへの第二の手紙 3章14節
前回は、イエス様がキリスト予言の書を「モーセの律法、預言書、詩篇」と表現されたことについて、それが、それが「律法(トーラー)」「預言書(ネビーイーム)」「諸書(ケスービーム)」の三つに区分されていた、ユダヤ教のヘブル語聖書全体を指していることを学びました。
ただし、現代の聖書では、イエス様がおっしゃった元々の三区分が分からなくなっています。これは、ヘブル語聖書がギリシャ語に翻訳された(七十人訳聖書)際に、新たに四つの区分に再編された結果です。そして、キリスト教の旧約聖書は、ギリシャ語訳に基づいて配置されました。下記に記したものがそれで、現在、私たちが目にしている聖書と同じ並びです。
【律法】・創世記・出エジプト記・レビ記・民数記・申命記
【歴史】・ヨシュア記・士師記・ルツ記・サムエル記上、下・列王記上、下・歴代誌上、下・エズラ記、ネヘミヤ記・エステル記
【文学】・ヨブ記・詩篇・箴言・伝道の書・雅歌
【預言】・イザヤ書・エレミヤ書・哀歌・エゼキエル書・ダニエル書/・ホセア書・ヨエル書・アモス書・オバデヤ書・・・マラキ書
これを元々のヘブル語聖書と比べて見ますと、旧約聖書の土台である「律法」(モーセ五書)は変化がありません。大きな変更は、「預言書」の前預言書を、「歴史書」として「後預言書」と分けたこと。次に「諸書」を、歴史書・預言書・文学書の三つに分けて再分配した点にあります。「諸書」はその名の通り、内容、形式、時代などが異なる、広い範囲の文書を含んでいました。そこで、より正典性を明らかにするためにも、内容や時代、著者を鑑みて、歴史・文学・預言に振り分けられたようです。
例えば「歴代誌」から「エステル記」は連続する時代と内容から。「ルツ記」も背景となる時代と、キリストの系図の関係で、歴史書として前預言書と一緒にまとめられました。「哀歌」はエレミヤが著者とされるためエレミヤ記に並べ、ダニエル書は、その著者と内容から預言書に分類されることになったと考えられています。上では、分かり易くするため「ケスービーム(諸書)」に属する書は赤字で表しています。
ユダヤ教におけるヘブル語聖書の三区分ですが、現代の私たちにとっても、それぞれの特徴を知ることで、聖書を読み進める一つの指標にすることができると思います。
まず、「律法」(モーセ五書)は信仰の土台です。神様と私たちの関係、「恵みの契約」の原則が教えられています。次に、律法の恵みの契約が歴史に適用されていく様子が「預言書(ネビーイーム)」で明らかにされます。現実の世界に表された、神様「主」のみ心とみわざが記録されています。さらに、「諸書(ケスービーム)」では恵みの契約の、個人の人生への適用を学ぶことが出来ます。私たちが神様との関係の中で、日々どのように生きて行けばよいか、を示してくれます。
以上のような読み方に、厳密にこだわる必要はありませんが、大きな枠組みを意識することで、旧約各書の理解に役立つと思います。
そして全ての書が、造り主にして全能の主なる神様が罪人を救うために、救い主として地上に遣わされた、御子イエス・キリストを指し示していることを覚えたいと思います。
(注:聖書区分の歴史・経緯等は厳密ではなく、分かり易いようにまとめたものです)